犬の百科事典 か行

か行

犬のトレーニングに関する用語や道具、動物行動学に関する用語をまとめた「犬の百科事典」です。専門学校などで愛玩動物看護師むけに講義を行ったり、教科書を執筆している講師が学術的な定義を基に、客観的かつ端的にまとめてありますのでご活用下さい。

カーミングキャップ

犬の顔にかぶせる伸縮性の覆面で視界を遮ることが出来る道具。競走馬にも同様な視覚を遮るブリンカー(遮眼革)や音を遮るメンコと呼ばれる覆面を被せることがある。視覚範囲の広い馬の一部の視界を制限したり、音刺激の抑制、顔にかかる砂を防御することで、馬の意識を他の刺激に惑わされずに競争や調教に集中される道具として使われている。犬でも同様に視覚を物理的に隠すことで視覚刺激から起こる不安・恐怖や興奮などの反応を制限することで恐怖反応を減少させることが出来る。

カーミングシグナル

自分と相手を落ち着かせるための合図として、ノルウェーのドッグトレーナーのトゥーリッド・ルーガス(Turid Rugaas)により27項目の行動を提唱された。代表的な項目であるイヌのあくびは、自分を落ち着かせるための意味と相手に落ち着いてほしい時に出す合図として発表している。しかしながら、コミュニケーションの一環として自分の状態を相手に伝えるという解釈は科学的な根拠には乏しく、学術用語としては用いられない。動物行動学ではカーミングシグナルと言われる行動の多くは葛藤行動として説明されいている。

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快刺激(かいしげき)

動物にとって快く感じるものを快刺激という。快刺激を受けると、中脳の腹側被蓋野から大脳皮質に投射する「報酬系回路」が刺激されることでドーパミンの分泌が促され「快」の感情が生じる。本質的に、脳は「快」に向かって行動するため、快刺激に対しては「安全」と判断し積極的に快刺激を受け取ろうとする。快刺激は、「食べる」、「遊ぶ」、「休む」など、本能的に快く感じるものもあれば、学習や経験によって快く感じるようになるものもある。

解発因子(かいはついんし)

特有の反応を引き起こす特定の刺激。解発刺激あるいは信号刺激とも呼ばれ、生得的行動においてこれらの刺激によって発現する機構に生得的解発機構がある。

外発的動機づけ

報酬や罰など外部刺激行動を引き起こす原動力となる動機づけのこと。犬の場合、コマンドに従うことによって得られる食べ物などの強化子や飼い主からの叱責といった罰子によってもたらされる。内発的動機づけを外発的動機づけが阻害することもある(過剰正当化効果)。

回避行動(かいひこうどう)

嫌悪刺激(不快刺激)を避ける行動。逃避行動との混同しないように注意が必要である。逃避行動とは何らかの嫌悪刺激が提示された際に、逃げようと避けることであり、回避行動は、何らかの嫌悪刺激が提示されることを予期・警告する刺激を受け、あらかじめ刺激を避けるという行動である。

外部刺激(がいぶしげき)

動物の体外環境からの刺激のこと。動物は外部刺激を五感で感じとり情報として脳に伝え処理する。

カウンターコマンド

代替行動を発現させる指示のこと。犬の問題行動において、例えば飛びついてしまう犬に対し、指示された時に「座る」ことを教えることで座る行動と相反する飛びつきを減らすことをする。この時の「座れ」という指示がカウンターコマンドに当たる。

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鍵刺激(かぎしげき)

動物が本来持っている特定の生得的行動を引き出す刺激となるもの。例えば、犬の新生子期では母犬の乳首に触れる(鍵刺激)ことで乳首を吸う(吸啜反応)が発現される。

学習(がくしゅう)

動物が生後の経験によって行動を変化させること。学習の仕方には、「オペラント条件付け」、「古典的条件付け」、「馴化」など様々な種類がある。

学習理論(がくしゅうりろん)

馴化」「鋭敏化」「古典的条件付け」「オペラント条件付け」など動物が経験により行動を変化させる「学習」の仕組みや基本原理のこと。犬のトレーニングや問題行動修正に不可欠な理論である。犬のしつけやトレーニングの現場において学習理論=行動学と勘違いされているが、学習理論はあくまで行動学の一部でしかない。

学習性無力症(がくしゅうせいむりょくしょう)

嫌悪刺激を用いた行動の抑制が起こった際、無気力になりその場から動かなくなってしまうこと。例えば、留守番中にオシッコをしてしまった犬に、帰宅した飼い主がいつも強い口調で叱る場合。飼い主の帰宅時に、飼い主の元に近づかないどころか、その場から動かないでいるようになる。さらに、他の場面でも強い刺激をあたることで、学習に対する意欲が低下し、その場で動かなくなってしまうのも同じことである。

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過剰正当化効果(かじょうせいとうかこうか)

外的な報酬を与えることで内発的動機づけが失われてしまうこと。犬では行動自体を楽しんでいた場合など、外発的な強化子がなくてもできていたことが、フードなどの強化子を与えることにより強化子なしではできなくなることがこれにあたる。別名アンダーマイニング効果。

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家畜化(かちくか)

ヒトが使役や食料といった様々な利用目的のために動物の生殖を管理し、飼育管理をする過程のこと
研究者により多少前後があるものの、犬はハイイロオオカミよりおよそ35000~12000年前に家畜化されたといわれている。
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葛藤行動(かっとうこうどう)

2つ以上の互いに矛盾する欲求が存在するような葛藤状態に示す行動失宜行動に分類される。葛藤行動はさらに転位行動転嫁行動真空行動に分類される。ある種のストレス状態を表しているが、必ずしもすべてが悪いわけではない。葛藤がもとになる犬の問題行動の修正は葛藤を引き起こす刺激に対し、恐怖や不安の反応を示さないように拮抗条件付けおよび系統的脱感作を用いたり、刺激を減弱、回避し葛藤行動を起こさせないことで対処する。

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噛みつきの抑制(かみつきのよくせい)

他の犬に対して、過剰な強さで歯を当てないようにすること。さらに、人に対しては歯を当てないように抑えること。犬は、社会化期の同腹犬との関わり合いによって、歯を当てる加減を覚える(子犬同士の遊びの中で、相手を強く噛んでしまうと、痛がってどこかに行ってしまい、遊びが終わってしまうことで学習する。)。さらに人に対しても、遊んでいる最中に歯が当たったら、遊びをおしまいにすることで歯を当てない遊び方を学習する。

雷恐怖症(かみなりきょうふしょう)

雷に対する過剰な恐怖反応。雷鳴による音刺激以外にも雷の光による視覚刺激や空気の振動による触覚刺激など聴覚以外の感覚器が受容することで引き起こされる場合もある。音響恐怖症と同じく刺激を受容することで突然強い反応が見られ、刺激の回避や逃避、震えるなどの不安を示す行動がが見られる。音響恐怖症を示す犬の87%は雷恐怖症を示すというデータもある。

感受期(かんじゅき)

ある出来事が個体の発達に対し長期的に影響を与える時期のことをさす。社会化に対し高い感受性を持つ時期(学習する適切な時期)として、社会化期と同義とされることが多い。

関心を求める行動(かんしんをもとめるこうどう)

犬が飼い主からの注目を得るために示す行動。具体的には吠える、唸る、飛び跳ねる、鼻で小突く等があり、注目を得ることで正の強化により行動が増加する。このような行動の結果、飼い主から得られたものがたとえ叱責や体罰であったとしても注目を得るという犬の目的は達成されているため習慣化してしまう。あくまで関心を求めることが目的であるため、遊びや食物を得るためのいわゆる要求吠えなどとは区別される。

拮抗条件付け(きっこうじょうけんづけ)

条件刺激に対し、すでに条件付けされている無条件刺激と競合する無条件刺激を条件付けすると、はじめに強化された条件反応が弱まり、あとから条件付けされた反応が強く生じるようになる。これを拮抗条件付けという。インターホンの音と来客の存在が条件付けされ吠えるようになった犬に、インターホンの音と食べ物などのその犬が喜ぶものを同時に提示し条件付けすると、インターホンがなった際の吠えが弱まる。

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逆行条件付け(ぎゃっこうじょうけんづけ)

無条件刺激の後に条件刺激を提示する方法を逆行条件付けというが、逆行条件付けでは無条件刺激と条件刺激は結びつかず学習は成立しない。犬のトレーニングで褒め言葉の「いいこ」を教える際、食べ物を与えてから「いいこ」と声をかけても、「いいこ」という言葉と食べ物は結びつかない。

逆行連鎖(ぎゃっこうれんさ)

反応連鎖を、一連の反応とは逆の順に結びつかせること。例えば、『冷蔵庫からペットボトルを取ってくる』反応連鎖を行う場合、冷蔵庫に行く(a)、次に冷蔵庫を開ける(b)、ペットボトルを口にくわえる(c)、冷蔵庫を閉める(d)、そしてペットボトルをハンドラーに持って行く(e)と分割したとする。逆行連鎖では順行連鎖とは逆に、eから学習させ、次にd→e、c→d→e、b→c→d→e、そして最後にa→b→c→d→eとしていく。報酬が最後のeをした段階で与えられるので、途中の反応で止まってしまうことがなく、順向連鎖に比べると反応連鎖が起こしやすくなる。

休息行動(きゅうそくこうどう)

エネルギー消費を少なくし、回復をはかる行動。座った姿勢や伏せた姿勢になる。犬はもともと巣穴で暮らし、静かで薄暗く囲われたような休息の場所(寝床)として好む習性がある。また、柔らかい場所で寝ることを好むため、外飼いの犬などは前肢で土を掘り起こして寝床を作ることがある。室内飼育の犬の場合、ソファやベッド、クッションなどを寝床として好み、クッションなどの前肢で掘る行動も発現することがよくある。

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強化(きょうか)(オペラント条件付けにおける)

オペラント条件付け学習によって、行動の頻度が高まることを強化と呼ぶ。反応したことで良い結果(快刺激)が与えられる正の強化と、反応したことで悪い結果(嫌悪刺激)が取り除かれる負の強化で行動の頻度は高まる。

強化(きょうか)(古典的条件付けにおける)

古典的条件付けの場合、無条件刺激中性刺激を繰り返し対呈示することで、中性刺激のみで無条件反応が生じるようになることを強化と呼ぶ。古典的条件付けによって強化された際には、中性刺激は条件刺激、条件刺激によって引き起こされた無条件反応は条件反応と呼ぶ。インターホンの音で犬が吠えることがあるが、もともと、インターホンの音はその犬にとって何の反応も生じさせない中性刺激である。しかし、来客に対して無条件反応である警戒心を持つ犬であれば、来客の存在自体が不安などの気持ちを生じさせる無条件刺激であるが、来客が訪問する際に必ずインターホンのが鳴ることで無条件刺激の来客と結びつき、インターホンの音が中性刺激として強化されて不安を生じさせる。

強化子(きょうかし)

オペラント条件付けで、結果として出現したりなくなることで反応の頻度を高める刺激を強化子と呼ぶ。
正の強化で反応を高める刺激を「正の強化子」、負の強化で反応を高める刺激を「負の強化子」と呼ぶ。

強化スケジュール(きょうかすけじゅーる)

動物の反応の後に与える報酬を、どういったタイミングで与えるかの計画(スケジュール)をいう。このスケジュールには、主に連続強化部分強化分化強化が含まれる。

強迫神経症(きょうはくしんけいしょう)

常同障害のこと。近年、犬が強迫観念を抱き、行動を発現しているか不明であり、そのように証明する事自体が不可能であるため、強迫神経症や強迫障害という言葉は動物には用いらなくなっている。

恐怖条件付け(きょうふじょうけんづけ)

音や光や場所など、その刺激自体に恐怖反応を形成しない刺激(条件刺激)と、電気ショックなどの恐怖反応を形成する刺激を対呈示することで、恐怖反応を形成しなかった刺激のみでも恐怖反応を示すようになる手続き。ランプが点灯すると電気ショックが流れる装置の中で恐怖条件づけが成立すると、電気ショックを流さなくてもランプが点灯するだけで恐怖反応が示される。
ただし、電気ショックが流れない状態でランプのみ点灯を繰り返すと恐怖反応が消失する消去(古典的条件付けにおける)が起こる。

恐怖性攻撃行動(きょうふせいこうげきこうどう)

恐怖刺激に対する攻撃行動。攻撃行動により恐怖刺激を回避できた場合、負の強化により重篤化を招き、積極的に攻撃に出るようになる。行動修正では恐怖刺激への馴致、脱感作、拮抗条件付けを行う。

去勢(きょせい)

生殖に必要な器官を切除し繁殖不能にすること。犬の場合、精巣を摘出する。マーキングマウンティングなど雄犬特有のテストステロンが関与する問題行動の改善や病気の予防、改善として行われる外科的処置の一つである。去勢によりテストステロンは著しく減少するが、問題行動は学習の要因など生理学的要因以外も影響するため、全てが解決するわけではない。しかしながら、行動を起こしたいというモチベーションに作用するため、雄特有の行動欲求の低下や、行動の強度や持続時間に変化をもたらし、問題を減らすのに有効である。去勢の時期は体の成長など行動学的な要因以外にも考慮すべき項目があるため、獣医師との相談を推奨する。

クリッカー

形状は様々なタイプがあるが、プラスチックの箱にアルミ板が設置されており、アルミ板を押すと「カチン」という金属音がなる。クリッカーを鳴らした後に報酬を与えることによって、金属音を二次性強化子として学習させることが可能で、誰でも同じ音で褒めることができ、瞬間的な行動や遠隔でも行動を強化(オペラント条件付けにおける)できる。
クリッカーの金属音に対して怖がるなど嫌悪刺激として認識する個体もいるので注意が必要。2017年現在、クリッカーを用いることがその他の方法と比べ学習が早くなるということは証明されていない。

クリッカートレーニング

クリッカー(クリック音がなる道具)を使い、その音を二次性強化子として、様々な学習をさせていくトレーニング方法。まずは、クリック音の後に報酬を与えることで、動物にとって快刺激として条件付ける(古典的条件付け)。そして、主に誘発法を基本とした逐次接近法のトレーニングを行うが、身体的誘導法鋳型法でのトレーニング時に、二次性強化子として使用しても学習は成立する。さらに、クリッカーを用いた拮抗条件付けを行うこともある。なお、褒め言葉よりもクリッカーを使うことで学習が早くなるという研究報告はない。

グルーミング

舌や歯、肢などを用いて体表をかく行動。物に体をこすりつけること、身震いなどもグルーミング目的の行動と含まれる。皮膚や被毛を毛についた寄生虫や汚れを取り除く目的や、体毛を整えるために行われる。身繕い行動として自らの体に行うこともあれば、他個体に向けて親和行動、母子行動として発現することがある。さらに、不安状態やストレスがかかったときなどの転位行動として示されることもある。

クレート

プラスチック製のハウスをのことを指すことが多い。床から天井まで四方が囲まれており壁、扉がついているもの。耐久性、耐衝撃性が高く、航空輸送に使用できるものもある。小さいものであれば犬を入れたまま持ち運びが可能である。犬の休息スペースとして用いられる。
布製のものもあり、「ソフトクレート」、「メッシュケージ」と呼ばれる。折り畳みができるものが多く、軽いため、持ち運びがしやすい。ただし、犬を入れたまま運ぶことは難しい。他のタイプのハウスに比べ、耐久性が低い。

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クレートトレーニング

所定の寝床(クレート)で休み、扉が閉まっていても大人しく、リラックスすることを身につけるトレーニングのこと。家庭内で休む時や、電車・車での移動時、旅行先、そして最近では災害時の同行避難、同伴避難の際に必要とされる。

継時弁別(けいじべんべつ)

2つの刺激を間隔あけて提示し、特定の刺激と随伴した行動をした時にのみ、強化子を与える弁別学習のこと。例えば、犬に「オスワリ」と言って座った時には強化子を与え、その後、異なる言葉の合図(静止性弁別刺激)を言った際、お座りやその他、何らかの反応を示したとしても強化子を与えない弁別学習方法。

系統的脱感作(けいとうてきだつかんさ)

小さな刺激から徐々に馴化させる方法を系統的脱感作という。鋭敏化などの副作用のデメリットも少ないが、十分な計画を立て系統立てて実践する必要があり時間も要するため、根気よく実践する必要がある。犬のしつけにおいて拮抗条件付けと合わせて問題行動の修正に用いられる。

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ケージ

天井から床まで四方が囲まれているハウス。ステンレス製の細いポールで作られているものが多い。通気性が良く、犬の様子がわかりやすく、安定感があることが特徴である。折り畳みができるものが多く、ケージのみの持ち運びはしやすい。犬の休息スペースとして用いられる。

嫌悪刺激(けんおしげき)

動物にとって不快に感じるものを嫌悪刺激という。本質的に、脳は「快」に向かって行動するため、嫌悪刺激に対しては「危険と」と判断しその刺激から逃避しようとする。嫌悪刺激は、「大きな音」、「嫌いな臭い」、「体罰」など、本能的に不快に感じるものもあれば、学習や経験によって不快に感じるようになるものもある。

権勢症候群(けんせいしょうこうぐん)

αシンドロームのこと

効果の法則(こうかのほうそく)

「動物にとって満足が伴う反応(行動)もしくは結果的に満足がもたらされる反応(行動)は、その場面とより強固に結びつき、満足が繰り返し伴えば、その反応(行動)はより繰り返されやすくなる。反対に、動物にとって不快を伴う反応(行動)もしくは結果的に不快がもたらされる反応(行動)は、その場面との結びつきが弱くなり、その反応(行動)は起きにくくなる。満足や不快が大きいほど、その結合はより強くなったり弱くなったりする」というオペラント条件付けの基本的な原理。アメリカの心理学者であるソーンダイクによって提唱された。

攻撃行動(こうげきこうどう)

他個体に対し危害を加える行動。犬の場合、ときに激しく対象を死に至らしめる場合もある。単なるしつけ不足にとどまらず、ホルモンや遺伝的な要因、疾患、学習など様々な原因があるため慎重に原因を特定し、それに見合った対処が必要となる。

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高次条件付け(こうじじょうけんづけ)(古典的条件付けにおける)

既に獲得した二次条件付け(古典的条件付けにおける)に結びついた条件刺激が反応を形成することを三次条件付け、三次条件付けに結びついた条件刺激が反応を形成することを四次条件付けと呼ぶが、二次条件付け以上の条件刺激が反応を形成するのことを高次条件付けと呼ぶ。

行動(こうどう)

動物がさまざまな刺激に対して働きかけるときに示す動きのこと。刺激には体の外(外部環境)から生じ、五感で感じる外部刺激と、ホルモンの増減や血糖値の変化といった体の中で生じる内部刺激がある。

行動コンサルテーション(こうどうこんさるてーしょん)

専門家(ドッグトレーナー)による体系的な問題行動のカウンセリング・修正・アドバイスのこと。

行動修正(こうどうしゅうせい)

馴化系統的脱感作古典的条件付けオペラント条件付けなどの学習理論に基づき、行動を変様させること。問題行動を形成している刺激や結果を特定し、これらを除去、減弱、または変化させることで、問題行動を消去(オペラント条件付けにおける)したり減少させるか、問題となっている行動自体を好ましい行動と置き換えることで修正を行う。

行動主義(こうどうしゅぎ)

1913年にJ.B. ワトソンにより提唱された心理学のアプローチの一つ。行動的アプローチともいう。ブラックボックスのような外からは観察できない心的な要因を考えずに科学的に行動を観察することによって行動の形成・変化などのメカニズムを解明できると主張した。

興奮性排尿(こうふんせいはいにょう)

いわゆるウレションのこと。筋肉が未発達な幼犬に多く見られ、成長とともになくなる。対処としては膀胱を空にする、犬が興奮するようなアプローチ(大きな声を出す、過度さわるなど)をしないよう心がけることが重要である。

興奮性弁別刺激(こうふんせいべんべつしげき)

反応(行動)と結果(報酬)に随伴(先行)した刺激のことを言う。

護身行動(ごしんこうどう)

体の保護や生理的恒常性維持のために示す自分の身を護るための行動。体温調整のために行わる水浴び、日陰に移動するなどがこれに含まれる。犬は、人間の皮膚のように汗腺が発達しておらず、汗をかいて体温調整することができない。犬は浅速呼吸(パンティング)により蒸散を行い、体温を調整する。

固定時隔スケジュール(こていじかくすけじゅーる)

部分強化スケジュールの一種で、一定の時間が経過した後、最初の反応に対して強化子が与えられる手続きのことをいう。そして強化子の呈示後、一定の時間を計時し同様の条件付けを繰り返す。定めた時間が経過する前の反応に対しては、強化子が与えらない。

固定比率スケジュール(こていひりつすけじゅーる)

部分強化スケジュールの一種で、一定回数の反応に対して、報酬を与える強化方法のこと。例えば、3回目に報酬を与える決めた場合、犬が3回、特定の反応をしなければ報酬を与えない。

古典的条件付け(こてんてきじょうけんづけ)

ロシアの生理学者イワン・パブロフによって発見された学習の一形態。無条件刺激と同時に中性刺激を繰り返し与えるこで、中性刺激が条件刺激となり、無条件反応と同じ反応の条件反応を引き起こすようになる学習の過程。パブロフの実験では、犬に餌を与える際、何の反応を示さないベルの音を毎日繰り返し聞かせると、犬にベルの音だけを聞かせただけで唾液を分泌するようになった。このように、古典的条件付けは、動物の生まれながらに備わった反応が、それまで全く関係のない何らかの刺激によって誘発されるようになるタイプの学習である。古典的条件付けでは、心拍、血流、発汗、睡眠、消化、性的反応のほか、喜びや恐れ、不安、排泄などの無意識に起こる身体機能(不随意反応)が、新しい刺激に対しても反応するようになるという特徴があり、犬のトレーニングでは、感情のコントロールをする際に古典的条件付けが用いられ、苦手なものを慣らす拮抗条件付けを行う際に利用される。

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古典的条件付けと忘却(こてんてきじょうけんづけとぼうきゃく)(消去)

条件刺激によって条件反応が生じるようになっても、条件刺激を提示してから無条件刺激の提示をしないことを続けると、条件刺激を提示したさいの条件反応が弱まるが、このような過程を消去(古典的条件付けにおける)と呼ぶ。褒め言葉の後にご褒美を与えると、褒め言葉をかけるだけでご褒美をもらった時と同じような嬉しい感情が働くようになるが、その後、褒め言葉をかけるだけでご褒美を与え続けないと、褒め言葉をかけられるだけでは徐々に嬉しい感情は弱まってくる。しかし、消去を行えば完全に忘れてしまうわけではなく、あくまでも反応が弱まるわけで学習したことを忘却するわけではない。

痕跡条件付け(こんせきじょうけんづけ)(古典的条件付けにおける)

順行条件付け(古典的条件付けにおける)の一つで、条件刺激の提示が終了後、しばらくしてから無条件刺激を提示する方法。

コマンドトレーニング

声符(声の合図)や指符(ハンドサイン)といった弁別刺激に結びついた所定の反応をするようにトレーニングすること。コマンド(command)とは、『命令』の意味が含まれるため、キュー(cue):『合図』と書かれている書籍もある。 いずれにせよ、三項随伴性を成立させるための、先行刺激学習させている。

コントロールハーネス

引っ張り防止を目的とする胴輪のこと。胸前中心部にリードが繋がれているコントロールハーネスは、前に力を入れて進もうとすると横に力が分散されるため引っ張りづらくなる。前に引っ張れない状態を作り、ハンドラーの横について歩いているときに報酬を与えるなどの歩行トレーニングが必要であるが、イヌの扱いに馴れていない人や力の弱い人でも比較的容易に使用することが出来る。後ずさりする個体や足の短いイヌはハーネスが脱げやすいので慣れるまでは首輪と一緒に止めると安全に使用できる。

執筆者:鹿野正顕(学術博士)、長谷川成志(学術博士)、岡本雄太(学術博士)、三井翔平(学術博士)、鈴木拓真CPDTーKA

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