犬の百科事典
な行
な行
犬のトレーニングに関する用語や道具、動物行動学に関する用語をまとめた「犬の百科事典」です。専門学校などで愛玩動物看護師むけに講義を行ったり、教科書を執筆している講師が学術的な定義を基に、客観的かつ端的にまとめてありますのでご活用下さい。
関連コラム:“子供っぽさ”が人と暮らすカギ~ネオテニーについて~
執筆者:鹿野正顕(学術博士)、長谷川成志(学術博士)、岡本雄太(学術博士)、三井翔平(学術博士)、鈴木拓真CPDTーKA
内発的動機づけ(ないはつてきどうきづけ)
自己の強い好奇心や関心などをもとに行動したことにより満足感や達成感を得られることができ、外発的動機づけのような報酬や罰子を必要としない動機づけ。内発的動機づけの行動は外発的動機づけよりも長期的で楽しく、質が高いと言われており、内発的な動機づけで行動しているにも関わらず、外発的動機付けを元にした行動を強いると逆効果になることもある。内部刺激(ないぶしげき)
動物の体内に生じる刺激のこと。血糖値やホルモンの増減などがある。縄張り性攻撃行動(なわばりせいこうげきこうどう)
家の中や庭、車など、犬が自らの縄張り(テリトリー)と認識している場所に入ってくる人・動物に対する攻撃行動。ドーベルマン、ジャーマン・シェパード・ドッグ、秋田、ミニチュア・シュナウザーなどの犬種によく見られると言われている。番犬目的に選択育種された犬種はもちろん、雌犬よりも雄犬によくみられる攻撃行動である。郵便配達員などの来客が対象となることが多く、行動の結果、対象がいなくなるという学習(負の強化)によって状態が悪化するケースがある。二次条件付け(にじじょうけんづけ)(古典的条件付けによる)
パブロフの実験では、一次条件付け(古典的条件付けによる)されたベルの音と同時にランプを点滅させたところ、ランプを点滅させるだけで犬は涎を流すようになった。このように、古典的条件付けでは、一次条件付けにさらに他の中性刺激が条件刺激となって結びついて反応を形成することを二次条件付けという。「good」という褒め言葉をかけてからすでに一次条件付けとして強化(古典的条件付けにおける)している「いいこ」という褒め言葉を繰り返しかけると、「good」といわれるだけでも犬は喜ぶようになり、「good」も褒め言葉として強化される。二次性強化子(にじせいきょうかし)
条件性強化子の一つで、一次性強化子に直接結びついた条件性強化子のこと。二次性罰子(にじせいばっし)
一次性罰子と対提示された中性刺激が、古典的条件付けによって一次性罰子と同等に働くようになった場合、その中性刺激は二次性罰子となる。トレーニングで用いられる“No”という言葉は、初めは犬にとって中性刺激だが、叱る、体罰を与えるなどの一次性罰子と対提示することによって二次性罰子ととなるため、正の罰を用いる際に嫌悪刺激として利用できるようになる。また、トレーニングディスクは、犬にトリーツをみせ、犬が食べる前にトレーニングディスクの音を鳴らしながら取り上げることによって条件付けするが、この手続きをすることで、取りあげられた嫌悪刺激(一次性罰子)とトレーニングディスクの音が古典的条件付けで結びつき、トレーニングディスクの音が二次性罰子となる。認知的アプローチ(にんちてきあぷろーち)
行動主義的アプローチと異なるアプローチの一つで、同一の刺激に対して異なる反応が起こる事象をブラックボックスのメカニズムも含め、情動などの意識や感情といった高次認知機能を脳科学的なアプローチで観察することで物理的なメカニズムを解明する方法。ネオテニー
外見や気質、行動など幼体の特徴を残したまま性成熟することで、幼形成熟ともいう。犬の場合、その祖先とされる野生のオオカミと比較すると、体の小型化、耳が垂れる、マズル(顎)が短くなるなどの外見上の変化や、生涯を通して遊び好きといったように気質・行動的にも子オオカミの特徴が色濃く残っているとされている。関連コラム:“子供っぽさ”が人と暮らすカギ~ネオテニーについて~
能動的服従(のうどうてきふくじゅう)
相手に対して敵意が無いことを積極的に示す行動。頭を下げる、耳を下げる、しっぽを下げる、姿勢を低くする、などのボディーランゲージを示すことが多く、さらに相手の口元をなめるたり、お腹を見せることもある。対象は犬だけでなく、人に対しても行われる。ノーズワーク
犬の嗅覚を使ったドッグスポーツ。もともとは犬が嗅覚を使う仕事や遊び全般を指し、セントワーク、セントトレーニングとよぶこともある。警察犬が容疑者を追跡したり、行方不明者を捜索する作業、災害救助犬が人を捜す、トリュフを探す、ガン細胞を見つける、などはすべて犬が鼻を使う作業になる。また、犬との遊びの中でフードを探し当てることもこれに当てはまる。競技のレベルによって臭いの種類の数、捜索範囲、誘惑の数が変化する。執筆者:鹿野正顕(学術博士)、長谷川成志(学術博士)、岡本雄太(学術博士)、三井翔平(学術博士)、鈴木拓真CPDTーKA